近年軽量化や高機能化が進む登山道具。

登山靴もローカットやハイカット、さらには日常使いもできるファッション性に富んだものなど、ただ山を登るための靴では無くなった。

私も普段は九州を拠点に山を登っている。
その中でふと疑問に思った。

「昔の人はどんな靴を履いて山に登っていたのか?」

現代のような高機能な登山靴が登場したのは2000年代以降。

日本では古来より信仰の一つとして人は山に入った。
そして現代のような山を楽しむ「近代登山」が始まったのは1870年代(明治時代)である。
従来信仰として登られいた山が、現代と同じく登頂や景観を楽しむことを目的として行われた。

近代登山が始まった頃、今のような登山靴は無かった。
人々が履いていたのはーー藁草履(わらぞうり)。

藁草履で山は登れるのか


藁草履と言っても侮るなかれ。
今の登山靴や沢履に負けないグリップ力を持ち、今でも沢登りで愛用する人もいる。

当時の人々は藁草履を自ら編んだ。
しかし、現代はネットで検索し購入ボタンを押すと、2〜3日後には完成品が届く。
便利な世の中である。

私も楽天市場で藁草履を購入。
(初めは自分で作ろうと考えていたが、部屋が藁だらけになることを考え断念した)

そして11月上旬、山行を決行した。

日本百名山・韓国岳に挑む


私の住む南九州も冷え込み始め、紅葉も徐々に色づき始めた頃、宮崎県と鹿児島にまたがる霧島連山最高峰の「韓国岳(からくにだけ)」へ出発した。
麓のえびの高原駐車場で草履を結び、山行が幕を開けた。

他の登山客はみなおしゃれな登山靴を履く。
私の藁草履が異彩を放っていた。
少し恥ずかしさを感じながら歩き出した。

始めは整備された登山道のため比較的歩きやすい道が続く。
普段履いている登山靴よりも靴底は薄いが、特に痛みは感じず歩きやすい。
30分ほど歩いたが草履も少し藁がほつれたのみであった。

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硫黄山の火口(この日はかなりガスが出ていた)

土曜日ということもあり登山客も多く挨拶を交わしながらすれ違う。
すれ違う度に足元に視線を感じる。
ツッコんでくれることを期待しながらも、何も触れられないまま尾根へ出た。

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山頂へ到着、藁草履の状態は?


登り初めて1時間半後、標高1700mの韓国岳山頂へ到着した。
山頂はガスに包まれており、展望は臨めなかった。

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山頂まで1時間半歩いてきたが、全く痛みはなかった。
草履の底の藁もしっかりと残っており、下山も問題なくできそうである。

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山頂は登山客で賑わいおにぎりやカップ麺を食べながらわいわいと話している。
他の登山客からの視線を少し感じながら、山頂でのコーヒーブレイクを楽しんだ。

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下山中、藁草履ついに逝く


山頂を30分ほど楽しんだのち、下山を開始した。
だんだんと雲がきれ始め、眼下に色づき始めた紅葉と大浪池が臨める。

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下山は登りよりもかなり石や岩の硬さが直接足に伝わる。
霧島連山は活火山ということもあり、ザレ場のような滑りやすい登山道が続くのが特徴だ。
しかし、藁草履のグリップ力は抜群である。
普通の登山靴よりもザレ場でのグリップ力は高いように感じた。

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下山中は何人かの登山客に「草鞋?」と声をかけられた。
私も思いつきで今回の山行を決めたため、特に話題も広がらず、会釈だけし通り過ぎた。
(ツッコんで欲しい気もあったが、いざツッコまれると恥ずかしさもあり、全く会話が広がらない)

その後も意気揚々と下山していた。
しかし、段々と藁が崩れ足袋が直に地面と当たっている感覚がした。
ふと状態を確認するとつま先部分が崩壊していた。

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その後も藁をぼろぼろと落としながらも、無事藁草履のまま下山することができた。
右足はほぼ崩壊状態であったが、左足だけがなんとか藁草履の形を保っていた。

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登山口のえびの高原から振り返ると、それまでガスに包まれていた韓国岳がくっきりと見えていた。

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今回の山行を終えて


近代登山が始まった明治時代の登山靴「藁草履」を使って山を登った。

今でも沢登りで使われるだけあり、現在の登山靴にも負けないグリップ力があったのは驚きだった。
耐久力はやはり靴には劣り、1回の山行でボロボロになってしまった。

明治時代の人々は何度も藁を編み直し、草履を修復して使ったのだろう。
現代のような高機能なギアに身を包み登る山とは対照的である。
(どちらが良くてどちらが悪いというわけではない)

今回藁草履を履いたからこそ、いつも以上に山の感触を肌で味わい、自分の歩き方のクセに気付かされた山行であった。
次回があるかわからないが、ただ山を登るだけではない違った楽しみ方を見つけていきたい。



あとがき:九州を舞台にした源流登山


私は普段九州を舞台に「源流登山」を行っている。
源流登山とは渓流を釣り上がりながら最上流にある山頂へと登ること。

私の活動の詳細は下記のnoteで配信している。

気になる方はぜひ。

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